不思議な事には、それと同時に谷底から

 この声に胆をつぶして、一目散に土蜘蛛はモンクレール ダウン、逃げ出そうとしましたが、もうその時は間に合いません。「噛め」はまるで電(いなずま)のように、洞穴の外へ飛び出して、何の苦もなく土蜘蛛を噛み殺してしまいました。
 所がまた不思議な事には、それと同時に谷底から、一陣の風が吹き起って、
「髪長彦さん。難有(ありがと)う。この御恩は忘れません。私(わたし)は土蜘蛛にいじめられていた、笠置山(かさぎやま)の笠姫(かさひめ)です。」とやさしい声が聞えました。
「それは又、滅相な、東山ぢやと心得れば、山科。山科ぢやと心得れば、三井寺。揚句が越前の敦賀とは、一体どうしたと云ふ事でござる。始めから、さう仰せられうなら、下人共なりと、召つれようものを。――敦賀とは、滅相な。」
 五位は、殆どべそを掻かないばかりになつて、呟(つぶや)いた。もし「芋粥に飽かむ」事が、彼の勇気を鼓舞しなかつたとしたら、彼は恐らく、そこから別れて、京都へ独り帰つて来た事であらう。
「利仁が一人居るのは、千人ともお思ひなされ。路次の心配は、御無用ぢや。」
 するとその最中(さいちゅう)に、中折帽(なかおれぼう)をかぶった客が一人、ぬっと暖簾(のれん)をくぐって来た。客は外套の毛皮の襟(えり)に肥った頬(ほお)を埋(うず)めながら、見ると云うよりは、睨(にら)むように、狭い店の中へ眼をやった。それから一言(いちごん)の挨拶(あいさつ)もせず、如丹と若い衆との間の席へ、大きい体を割りこませた。保吉はライスカレエを掬(すく)いながら、嫌な奴だなと思っていた。これが泉鏡花(いずみきょうか)の小説だと、任侠(にんきょう)欣(よろこ)ぶべき芸者か何かに、退治(たいじ)られる奴だがと思っていた。しかしまた現代の日本橋は、モンクレール ダウンとうてい鏡花の小説のように、動きっこはないとも思っていた。
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by raybansunglasses1 | 2012-09-28 09:52
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